2024年 03月 10日
読書ノート:『植物の形には意味がある』 生物の生き方の違いがある |
何気なく、「植物の形」という言葉に惹かれて、ブックオフの店頭で手に取ったのだが、なかなかインパクトの強い本である。植物の見た目の違いには、生物の生き方の違いが反映されていると著者はいう。どうして根っこはもじゃもじゃしているのか、なぜ丸い葉っぱとギザギザの葉っぱがあるのか、等々。形を機能から考えることだと。また、遺伝情報の多様性については、植物と病原体とのセキュリティの戦いであることを示唆している。いま、コロナ渦でウィルスとの厳しい戦いを強いられたわれわれ人類にとって、もっとも共感できることだ。
普遍性をもつ性質は、多くの植物がそうでなくてはならない理由があるはずだという。たとえば、葉っぱが平たいこと ―― ここにも、本質的な機能的制約が隠れているはずだ。このテーマは、光エネルギーを効率よく集めるために、多くの植物の葉は平たいというのが理由だ。根はなぜ「もじゃもじゃなのか」を考えてみよう。根の機能は水と栄養分を細胞の表面から吸収すること。だから表面積の広さがポイントになるだろう。細い線状の構造であれば、ある程度の表面積を確保できる。ばらばらにもならず、さらに土の中に新たに伸ばすことも難しくない。表面積を稼ぐには、もじゃもじゃにするしか手段がないのだ。
ほとんどの植物は根の周りに菌根菌と呼ばれる微生物を共生させている。植物にとってのプラスは、根の表面に取りついた菌根菌が吸収するリン酸などの栄養となるイオン。一方、菌根菌にとってプラスになるのは、植物から供給される有機物だ。根粒菌というのがいる。窒素は空気の8割を占めるのだが、植物はこの窒素を自分たちが使える形に変えることができない。根粒菌は、まさにこの窒素固定ができる。共生関係だ。
◆『植物の形には意味がある』 園池公毅(そのいけ きんたけ)、角川ショフィア文庫、令和4(2022)年/12月
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by kana-smart
| 2024-03-10 11:46
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