鉱石ラジオと『メディアの権力』 |
『メディアの権力』朝日文庫版で全4巻のうちの第1巻であった。
デイヴィッド・ハルバースタムが取り組んだ長大なノンフィクション。
筑紫哲也による、まえがきによれば、本書は、
アメリカのメディアにおける巨大な存在――CBSテレビ、タイム誌、ワシントン・ポスト紙、ロスアンジェルス・タイムズ紙――を創り上げた巨人たちを選び出して、その人物像と軌跡、周辺を描き出そうというもの。
原著の刊行は1979年であるが、30年前のものとは言えまだまだ読み応えがある。
ただ、CBSをはじめとするこれらの巨人群も、既に臨終寸前だろうか。
今やインターネットがメディアで中心であり、グーグルなどが大きく成長しているのだから。
この『メディアの権力』、古本にしてもなかなか手頃な価格で手に入れることができないのが残念。
細かな翻訳ミスが気にかかる。第1章はCBS黎明期の物語。冒頭部に「水晶式ラジオ」なるものが出てきた。何のことだろう?しばらく頭をひねくったが、この原語は"crystal radio"だろうと気がついた。であるなら、「鉱石ラジオ」が適訳だ。
訳者代表の筑紫哲也もラジオ少年ではなかったか。鉱石ラジオを手にした世代だろうと思われる。新版ではこのミスは訂正されているのだろうか。