<民族音楽>との邂逅 小泉文夫のメッセージ |
梅雨のただなか。台風が3つも来ているようだ。傘をさして上野公園から藝大・奏楽堂へと向かう。開演20分前にはホールに到着したのだが既にかなりの人だかり。すごい人気のよう。ホールは文字通り立錐の余地がない。かろうじて最後方に座席を確保。座席がなく、ロビーでモニターを鑑賞する人もかなり出たようだ。
本日のテーマは「<民族音楽>との邂逅―― 小泉文夫のメッセージ」というもの。小泉文夫(1927-1983)は民族音楽研究家として活躍。藝大元教授。戦後日本の音楽文化に民族音楽という視点から日本音楽の再発見の取り組んだ。また世界各国の民族音楽の魅力を一般の音楽愛好家にわかりやす伝えた。今年は小泉文夫の33回忌にあたるとのことだ。
確かに小泉文夫の名前は記憶にある。「世界の民族音楽」だったか、NHK・FMに定期番組を持っていたはずだ。ずっと続いていましたね。
プログラムは盛りだくさん――日本、インド、インドネシア、モンゴル、ウイグル、……各国の音楽が次々と演奏される。田中美登里さんの司会で進行した。
いずれもエネルギー感にあふれるものであった。日本からは、長唄やお囃子とか――洗練されたものではあったものの、土俗的なものではなく、他国から紹介された音楽とは様子が違ったなと感じた。
印象的だったのは、まずモンゴルのホーミー。ナマでの迫力にびっくり、独特の陰影感のある音声がホール中に響き渡った。大草原で鍛えられたものなのだろう。歌の内容を知りたいと思った。それに、二胡だったか、こちらの演奏も単純な響きのなかに憂愁を感じるようなものでしたね。
最後は、小泉文夫さんが力をいれて取り組んでいた「バリ・ガムラン」の演奏。舞台いっぱいに各種の打楽器や、鐘、銅鑼などが並ぶ。鉄琴のような響きをだすものもあったか。撥弦楽器も。それに人声が加わる。ガムランとは、これらの楽器群の総称のようだ。
演奏されたのは、どこか儀式的な意味合いがあったのだろうか。静かな荘重な雰囲気である。大きな鐘のリズムが継続し、ガムラン独特の響きが生まれてくる。深い森林の様子が浮かんできた。
<プログラム>
長唄:味見純、味見亭
南インド・ヴィーナー:的場裕子
南インド・声楽:井上貴子ほか
インドネシア バリ・ガムラン:皆川厚一ほか
モンゴル・ホーミー:ボルドー・エルデネ
ウイグル・ラワープ:アブドセミ・アブドラハマン
邦楽囃子:望月太左衛ほか
尺八:クリストファー遙盟
雅楽:中村仁美ほか
インドネシア ジャワ・ガムラン:サプトノ、田村史子ほか