立って読む |
竹踏みには木片を削って丸くした小さな突起がたくさん埋め込んであり、それがぐりぐりと足の裏を刺激する。……そんなときには幸福を感ずる。
図書館で何となく手に取った『狐の読書快然』(羊泉社、1999)という本。
著者である「狐」さんの読書スタイルだという。1981年から夕刊紙「日刊ゲンダイ」に新刊書のブックレビューを書いているとのこと。毎週水曜日の紙面に登場。寡聞にしてまったく名前を存じ上げなかった。
残念ながら、体調をくずして2003年8月から降板したそうだ。道理で昨夜キオスクで買った「日刊ゲンダイ」の読書欄を探してもなかったはずだ。
この『狐の読書快然』の冒頭にとりあげているのが、音楽評論家・吉田秀和のエッセイ集『物にはきまったよさはなく……』だ。匿名書評といえば過激な内容か、との期待もあったのだが、まあ常識的な選択である。しかし、切り口がおもしろい。日常的な言葉を使って「快いざわめき」があるという。「ごめんなさい」から、「どうもありがとう」まで。
それと、パソコンのキーボードのブラインド・タッチを習得するくだりでは増田忠の本を絶賛している。同じ本でまったく同じようなトレーニングをつんだ人間としては、同感しきりである。
どんなに小さな分野にも、きっと1冊は役に立つ実用書があると。