チョン・ミョンフン指揮 《イドメネオ》 |
大型台風の4号がちょうど東京を直撃とのことで、直前まで演奏会が開かれるのかどうかヤキモキ状態である。東フィルのホームページをクリックして何回も確認したのだが、ようやく11時には、やるとの結論が出た。開演時間の15時には、台風も過ぎ去ったようで風雨は弱まり晴れ間さえ見えたのでは。
《イドメネオ》は大好きなオペラの一つ。数年前には東フィルのオペラ・コンチェルタンテでも公演があった。
2002/11月 東フィル オペラコンチエェルタンテ 沼尻竜典指揮
2006/10月 新国立劇場 ダン・エッティンガー指揮
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今回の公演、ちょっと気が早いかもしれないが、個人的なコンサート経験では、今年のベスト・ワンではないか。チョン・ミョンフンで、これほどセンシティブな指揮ぶりを目にするのは、初めてである。
あたかも繊細なガラス器を思わせる、透明度の高いかつ完成度の高い演奏会であった。《イドメネオ》はコンサート形式でこそ真価を発揮する、とチョンは言っているが、新国立のオケ・ピットでぜひ振ってもらいたいものだ。
オケや歌手陣ももちろん素晴らしかったが、東フィルの健闘ぶりは特筆に値するのではないかな。弦楽器の軽やかな歌いぶりなど、経験の豊かさが透けて聞こえる。オーボエとかホルンなどの楽器群もバランスが良い。合唱のコントロールなど水際だった歯切れの良さだ。
序曲からして、ワクワク感が横溢する。幕開きを期待させるものであった。冒頭のイリアのアリアも清楚な感じが良い
第2幕 イリアのアリア「たとえ父を失い」など、弱音器をつけたヴァイオリンの響き、それに木管が重なって、思いっきり繊細でふるえるように、寄り添うような伴奏である。これを聴くと、モーツァルトが、初演当時この歌手に大分入れ込んでいたのではないか?とまで余計な心配をするほどだ。
しかしプログラムを読むと、このアリアは当初カット対象だったようである。誰の構成だったのか?このアリア無くして、イリアの純真無垢な心を歌い上げる場面がないではないか。《イドメネオ》のキモとも言えるのでは。
合唱の迫力も充分だ。東京オペラシンガーズはたいしたものだ。
イリアは第3幕にも聴かせどころがありましたね。臼木あいさん(S)も可憐さがある。高音の伸びにちょっと生硬があったか。イリアは実はしんの強い女性かもしれない。
エレットラはさすがです。余裕がああった。個人的には声質は、もう少し冷徹感があったらベストだ。
第3幕の長大なアリアを歌いきった。思わず拍手が出てしまうほど。
イドメネオは、ヴェテランの味か。イダマンテは精一杯に聞こえた。
指揮:チョン・ミョンフン
イドメネオ:福井敬
イダマンテ:林美智子
イリア:臼木あい
エレットラ:カルメラ・レミージョ
大司祭:真野郁夫
海神の声:成田眞
合唱:東京オペラシンガーズ