二期会の《仮面舞踏会》 |
ヴェルディ 《仮面舞踏会》全三幕。東京文化会館 2007.09.07(土)
実に緊迫感にあふれた楽しめたオペラ公演であった。
指揮:オンドレイ・レナルト
管弦楽:読売日本交響楽団
演出:粟國淳
【配役】
リッカルド(ボストン知事):福井敬
レナート(リッカルドの秘書):福島明也
アメーリア:木下美穂子
ウルリカ(占い女):押見朋子
小姓オスカル:大西ゆか
ストーリーは、不倫の三角関係の果ての殺人事件と、ひと言でいったら身も蓋もないか。
今回は、原作のスウェーデンをボストンに移したアメリカ・バージョン。
セットも当時のアメリカの雰囲気を反映したもの。演出も、いわゆる読み替え版ではなく、落ち着いて鑑賞できた。
このオペラは第2幕が核だなと思う。
アメリアの被っていたベールがはぎ取られて、不倫が露わになりレナートが絶望するくだり。
ここを折り返し点としてオペラは反転するようだ。
それにこの第2幕。冒頭のアメリアの独唱も、オーボエをバックに素晴らしい演奏であった。
アメリアとリッカルドの熱情的な二重唱は、《トリスタン》を連想させる。オケもひどく爆発的なフォルテを鳴り響かせるが、金管をはじめとしてこんなに感情があふれたのはヴェルディには珍しいのではないか。
真夜中の処刑場とのことで、不気味な雰囲気を表すためか、舞台を大きなグロテスクな木(?)のオブジェが突出している。これは何かのシンボルか?
読響がオケピットに入ったのを聞くのは初めてであったが文句はありません。とくに木管など素晴らしかったと思う。
オンドレイ・レナルト(この人も初めて)のオーソドックスな指揮の下、実に安定感のある演奏ぶりで、このオペラを支えていたと思う。
歌手では、主役リッカルドの福井敬さん。安定感のある歌唱ではなかったでしょうか。1幕の登場からトップギアで大変だったように思う。
アメリアの木下実穂子さん。個人的には、ビブラートの強い歌い方がどうにも抵抗があった。
福島明也さんのレナート。いちばん心に響きました。