新国立の《アンドレア・シェニエ》 |
舞台には初めて接したが、アリアの聴き所の多い名作オペラではないか。音楽にも活力がある。しかし開幕に先立って主催者から、マッダレーナ役のゲオルギーナ・ルカーチが風邪を引いて体調不良との挨拶があったりして最初から萎えてしまった。
物語は実在の詩人アンドレア・シェニエをモデルにしたもの。フランス革命が舞台。ロベスピエールの恐怖政治を批判したためにシェニエが断頭台の露と消える。それに、恋人マッダレーナと彼女を密かに慕うジェラールがからむ。作曲のジョルダーノ(1867-1948)はブッチーニ、マスカーニと並ぶイタリアの作曲家、ヴェリズモ派。
シェニエのアリアには、「ある日、青空をながめて」、「5月の晴れた日のように」など――いずれも名曲だと思う。CDで聞き慣れたデル・モナコの声に比較するのは無理としても、当夜のカール・タナーのアンドレア・シェニエもよかったのでは。しかし、ジェラールのセルゲイ・レイフェルクスの方が一段と生彩もあった。ゲオルギーナ・ルカーチにはイマイチ魅力がなかったな。
どうも舞台演出に不満が残った。群衆が大きな役割を果たしているようだが、動きがバラバラで統一感がなくメッセージが伝わってこない。それと、子供たちが幕切れに出てきて、明るい未来を暗示するというのは、いまさらという感じで陳腐である。
指揮:ミゲル・ゴメス=マルティネス、演出:フィリップ・アルロー
合唱指揮:三澤洋史、合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
アンドレア・シェニエ:カール・タナー
マッダレーナ:ゲオルギーナ・ルカーチ
ジェラール:セルゲイ・レイフェルクス
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