ワーグナー:楽劇《ジークフリート》 |
新国立劇場 2017.6.7
キャンセル・チケットをインターネットで手に入れることができた。最上階席であるが鑑賞には充分。マチネー公演ではあったが、さすがに終演は20時ちかくとなった。
このところ、個人的には「ワーグナーへの耐性」がとみに強くなっているように感じる。ワーグナー得意の、延々と続く、過去の経緯説明の回想場面――にも、そんなに苦痛を感じることはなくなってきた。この《ジークフリート》でも第1幕のヴォータン登場場面とか。
本日の公演も楽しみました。やはり、なんと言っても、ジークフリートを演じたグールドの魅力が大きかったですね。エネルギッシュな若々しさにあふれていました。ホールいっぱいに響く力強い歌唱でした。まさにヘルデン・テノールでした。
演出はゲッツ・フリードリヒ。かつて、「トンネルリング」(横浜公演)を見ました。《神々の黄昏》冒頭で3人のノルンが赤い糸をたぐり寄せる様をかすかに記憶しています。今回の舞台は、フィンランド国立歌劇場との協力とのこと(レンタル?)。オーソドックスな演出と感じました、メッセージ性はそれほど強くないですね。黄金を守って洞窟にこもるファーフナーは、資本主義社会の不合理を象徴しているのかとか……
第1幕 ノートングの鍛造の描写は細かいこだわりがあったよう。第2幕の大蛇の登場とか、森の小鳥とか。もっと他のアイデアがあったのでは?それに最終幕、ブリュンヒルデとの出会いの場面。どこか綴じられた室内空間のような印象です。もっと広い空間へと飛び出すような、常識的ですが、そんな期待がありましたが。
東響のワーグナー演奏は初めての機会?頑張ったと思いますが、
<スタッフ>
ジークフリート:ステファン・グールド
ブリュンヒルデ:リカルダ・メルベート
ミーメ:アンドレアス・コンラッド
さすらい人:グリア・グリムスレイ
アルベリヒ:トーマス・ガゼリ
ファフナー:クリスティアン・ヒュープナー
エルダ:クリスタ・マイヤー
森の小鳥:鵜木絵里、吉原圭子、安井陽子、九嶋香奈枝
指揮:飯守泰次郎
管弦楽:東京交響楽団
演出:ゲッツ・フリードリヒ
協力:フィンランド国立歌劇場(ヘルシンキ)
私もワーグナーの『ジークフリート』の舞台を鑑賞してきましたので、ブログを興味深く読ませていただきました。ワーグナーの楽劇は、活気に満ち血が通った力強い音楽、説得力を持って語りかけてくる音楽のテンポの躍動的変化が生み出す推進力、常に人間の歌声が中心に置かれながら、完璧なまでのオーケストレーションは、ワーグナーの世界に魅了されました。巧みにライトモチーフが縦横に張り巡らされていているので、対話の裏に真意を紐解きながら内容を楽しむことができます。歌は、自らの気持ちを音楽に込めたアリアや対話形式ですが、主役級の歌手の歌・声・言い回しの魅力に浸れ、歌手の歌や演技の技量を堪能できるよろこびがあります。私はキース・ウォーナー演出、準・メルクル指揮「トーキョー・リング」も鑑賞していましたので、今回の飯守泰次郎さんの『ジークフリート』も冷静に客観的に比較しながら楽しむことができました。
その観点も含めて、『ジークフリート』の魅力と特徴、楽劇の舞台に及ぼす演出の力を考察しながら、今回の飯守泰次郎さんの魅力を整理してみました。一度眼を通していただき、何かのご参考になれば幸いです。ご感想、ご意見などコメントいただけると感謝いたします。
楽しめる公演でしたね!第2幕の森の小鳥の場面。もうすこし洗練されたものだったら、と思いました!