トスカニーニの《椿姫》 |
LP発売時のオリジナル・ジャケットをCDの表紙にしたシリーズであり、懐かしいものだ。久しぶりにこのCDを聞いてみると、音質がかなり改善されているようである。クリアで歪感も減少している。ほとんど残響のない、悪名の高い例のNBC-8Hスタジオでの録音(1946年)であるが、聞きやすいものに変わっている。
演奏はなんと言ったらいいのか。言うまでもなくトスカニーニそのものである。とぎすまされた刃ですぱりと料理している感がある。浮かび上がってくる旋律に透明感が加わっている。現代の指揮者・オケからは絶対に聞けないものだ。
それに独特のリズム感はどうだ。舞踏会の場面にしても、あまりにも正確なオケの演奏ぶりであるがために、あたかも兵士の演ずる軍隊体操(……こんなものがある?)のような趣きだ。
カンタビーレの強靱さ――美しさというより氷を思わせる冷たさが潜んでいる。そしてアリアになると、トスカニーニは我慢できないようである。あまりにも堂々とトスカニーニの歌声がはっきり録音されている。