『考える人』 吉田秀和ロングインタビュー |
特集:クラシック音楽と本さえあれば
吉田秀和ロングインタビュー(聞き手:堀江敏幸)が、冒頭12ページを費やして掲載されている。先にNHK教育テレビで放映された、「言葉で奏でる音楽――吉田秀和の軌跡」(07.7.1)は、この対談の一部を抜き出したものとのこと。
インタビューアとして堀江さんは最適ではなかったか。敬愛あふれる問いかけの数々が吉田秀和の思いを引き出して、素晴らしいインタビューとなっている。テレビの画面からは、さらに気持ちのよい陽光が降りそそぐなか薫風まで伝わってくる。
NHK-FMの「名曲のたのしみ」は1971年に始まったそうだ。すでに、30数年も続いている!
堀江さんは、吉田さんの歯切れのいい、やさしい語り口に魅了されたという。
吉田秀和は、放送に際しても考えを凝らしたようである。ラジオにはだれもやってないことをやるという楽しみがある、文章にリズムを与える修練になるという利点があると。「名曲の楽しみ」では、話し言葉のリズムの発見をやっているのだと言う。
例えば、放送では、いつも冒頭に「名曲のたのしみ。吉田秀和」と言うだけで、「です」とも何とも言わない。あそこに行くまでには少し苦労してね、初めは何か言っていたんですよ、と。
はじめての翻訳の仕事。自分のスタイルの中に、外国語の文脈も入れるようにしたという。その方が音楽の実態に即しているような気がしたと。
「である」とか「だ」とかという日本語の言葉の終わり方の単調さを壊すのに、音楽的な「転調」あるいは「反行」「転回」、つまりひっくり返したり、ちがう文脈のものを入れてきて変化を加えたり、そういうことをやるのがとても楽しみだったと。