ジョン・カルショー『ニーベルングの指環』の新訳登場 |
ウィーンフィルによる《ニーベルングの指環》全曲を初めて録音しレコード化したときの記録である。
◆『ニーベルングの指環――リング・リサウンディング』 学習研究社、2007/9月刊
黒田恭一さんの訳した旧版も、もちろん持っている。これは何回も新版発刊のアナウンスを聞いたものだが、ようやく、どういう経緯か山崎さんの新訳が世に出たようだ。ぼろぼろの古本にとんでもない値付けがされているのを見たことがある、YAHOO!のオークションだったかな。
改めて読み直すと、読みやすさに気がつく。と同時に、いろいろと興味深いエピソードが満載で、どうにもページをめくるのがもどかしい。
なかでも、ショルティとカルショーの遭遇のきっかけなど面白い。当時、ショルティがミュンヘンの音楽監督をしていたなんて失念していた。そういえば、この間、手にした、《ワルキューレ》第1幕のCDは、ちょうどこの時期のショルティの指揮を録音したものだったのか。
ほぼリアル・タイムに、この《指環》の録音から、そして国内版(ロンドン・レーベル)の発売という歴史につきあったことになる。特に最初にリリーズされた、あのショッキングな《ラインの黄金》のドンナーの一撃である雷鳴の轟きには、当時のレコード用のカートリッジではトレースできなかったものだ。
その頃の貧乏学生には、とてもオペラの全曲盤なんて手に入れることができず、高嶺の花であったが。
このデッカ《指環》の録音は、1959年の《ラインの黄金》から始まり、《ジークフリート》、《神々の黄昏》を経て、最後の《ワルキューレ》を取り終わったのは、1965年。7年を要した大プロジェクトであった。
この後、堰を切ったように、カラヤンなどの《指環》の全曲録音が続いた。
いまやライブ録音を含むと、《指環》の録音も何十種類とリリーズされているようだ。
いま思うと、カルショーの情熱のおもむくままに先導されて、ワグナーの世界にどっぷりと引き込まれたわけだ。