大野和士のオペラ・レクチャーコンサート |
神奈川県立音楽堂 20101.8.27(金)
今回も、大野和士のオペラへの情熱と、啓蒙意欲を強く感じたレクチャーコンサートであった。今回はアベ・プレヴォーの書いた小説『マノン・レスコー』を原作とする、マスネとプッチーニのオペラ《マノン》、《マノン・レスコー》を題材にしたもの。
どんなテーマを選択し、どんな曲を選ぶのか。大野はアイデアを絞っているはずである。なかなか簡単な仕事ではないはず。もちろんオペラ上演の幅広い経験が物を言う。これからも続けてほしいと思う。
会場はほんとに立錐の余地のない満席であった。レクチャーと銘打っただけに、大野が対訳のページ番号を言うと、会場の全員が、対訳のパンフレットをざわざわと音を立ててめくるのがオカシイ。
原作からひとつの場面を選び、二人の作曲家がどのように描き分けるのか、興味あるテーマである。演奏を対比して聞かせてくれる。マスネには細かな作曲ぶりを感じる。響きがやや現代的か。一方プッチーニは、《マノン・レスコー》は初期作にもかかわらず、すでに抒情感の横溢したプッチーニ節があふれる。
いつもながら、オペラをとらえる、大野の歴史的な視線を感じる。
水平的に――どのような時代背景から生まれたか、同時代の作曲家からの影響を受けている……。垂直的に――作曲家の中での自己成長の歩みを探ること。《マノン》のデ・グリューはドン・ホセであるという。プッチーニの《マノン・レスコー》にははっきりと《ボエーム》の萌芽がある。
<出演>
◆マスネ《マノン》:並河寿美(S)、望月哲也(T)
◆プッチーニ《マノン・レスコー》:黒木真弓(S)、馬場崇(T)
